強引な副社長との政略結婚は甘すぎます

「お姫ちゃん!ちゃんと最後をみようよ」
晃さんの言葉に、私は立ち止まる。

最後……。

その言葉が突き刺さる。

「でも……こんな格好じゃ……」

「いいから」

いつも慣れ親しんだ会社だが、今日は大きく見え足がすくむ。

「晃さん……」

音もなく開いたエレベーターに乗り込むとボタンを押して、晃さんは私を見た。

「役員会だけど、俺はお姫ちゃんは見る権利があると思ってるから」
清水グループの役員会など、まったく私には縁のないものだし、もうどうしていいかわからない。

しかしここまで来て、一人で帰ってもきっと後悔するのもわかっていた。

翔太郎さんがきちんと後継者として見届けることは、私が翔太郎さんを諦める為に必要なことなのかもしれない。

私はそう思うと、ギュッと自分の手を握りしめた。

重厚なドアが続く、一見して役員フロアとわかるその階につくと、私は晃さんの後にむかいその場に向かった。

「静かにね」
そう小声でいった晃さんの言葉に私は頷いた。
< 209 / 218 >

この作品をシェア

pagetop