強引な副社長との政略結婚は甘すぎます

そっと後ろの扉から入ると、テレビで見たことがあるような楕円状の机に座ったスーツの人たちが何十人といた。

その机の一番前に座る、おじいさんとお父さん、そして翔太郎さんの姿が目に入り、私はなんとも言えない気持になった。

あの場所が翔太郎さんが長年求めた場所であり、ずっとずっとそのために努力してきたのだろう。

ああ、私も役に立てたんだ……。

「晃さん、もう……」
そう言いかけた時に、おもむろに翔太郎さんが立ち上がり私を見た。
翔太郎さん?

その視線の意味が解らず、私はその視線に戸惑いを覚えた。

「私は社長の座を辞退します」

その言葉と同時に騒めきがその場を包んだ。

「翔太郎?!」
おじいさんの驚いた声が響いたが、翔太郎さんは同じ言葉を繰り返した。

「私は、清水グループトップの座は必要ありません。以上です」
迷いなく言い切った、その姿に私はどうして?その言葉しか出てこなかった。


ざわつくその場でもう一度翔太郎さんはお辞儀をすると歩き出した。

私のところに来ると、真剣な瞳で私を見つめた後、手をとりその場から出ようとした。
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