強引な副社長との政略結婚は甘すぎます
「待て!」
そう言われて待つわけもなく、私は玄関に手をかけたところで、またもや後ろから拘束された。

この人は距離感がおかしい!

「離して……」

「頼む……待って」

私の言葉に被せるように、突如懇願するような、今までとは違った声に私は戸惑いを覚えた。

「帰ります……」
なぜか今までの勢いを保つことができず、私は翔太郎の腕の中で体を固まらせた。

「帰ってどうする?」
「それは……」
言葉に詰まった私の手を、翔太郎はそっと取ると、親が子供の手を引くように、もといたリビングへと歩き出した。

「離して……」
不服を述べようとした私に、翔太郎は静かに言葉を発した。

「話をしよう」

急にそんな大人な対応しないでよ。私が一人子供みたいに駄々をこねてるみたいじゃない……。

わかったと返事をすることはどうしてもできず、私は無言で手をひかれるまま翔太郎についてリビングへと戻った。
先ほどのソファに座ると、翔太郎は少し考えるような表情をした後、私をみた。
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