強引な副社長との政略結婚は甘すぎます
顔でも洗おうかな……。

パジャマのまま、ぼんやりとした頭で下に降りると、なにやら話し声がする気がして、そっとリビングのドアに近づいた。

翔太郎の家とは違い、ごく普通の私の家では、内緒話なんてものは存在しない。
すぐそばで繰り広げられている話は、丸聞こえだった。

『本当にうちの何のとりえもない娘が、翔太郎さんのような素敵な人と結婚できるなんて……』
『いえ、私こそご先祖のお陰で、こんな素敵な縁談にめぐまれ、優里香さんにも了承して頂きこんな嬉しい事はありません』

え……?なんて言った?今……。

私は耳を疑うような翔太郎の声に、扉の外で立ち尽くした。

『そんなそんな。本当にもったいないお言葉だわ。ねえ、あなた』
『本当だよ。こんな立派な息子ができるなんて』
父までもご機嫌な声を出していることに、私は頭が真っ白になり、何も言葉を発することができなかった。
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