強引な副社長との政略結婚は甘すぎます
抱きしめる腕は、私を離さないために力強く、親に聞こえないようにする為に、耳元で囁いているだけ。
どれも私に余計な事を言わせないための行為だと理解しているのに、男慣れしてない私はいっぱいいっぱいだった。

翔太郎の匂いか、香水の香りかわからないが、クラクラしそうな甘い香に、バクバクと心臓がなって何も言えずにいた。

「あらあら、もうそんなに仲良しなのね。お父さんとお母さん見たいね」
どこまでも能天気な母の言葉が、遠くから聞こえた気がした。

「すぐに意気投合してしまいました。きっと出会う事が運命だったんですね。」
何が運命よ……。脅迫したくせに……。

私を抱きしめたまま、母ににこやかに笑う悪魔の様な作り笑いの翔太郎は、少し力を緩めると、私の顔を覗き込んだ
。

そのキレイすぎる顔は、笑顔だが目は全く笑っておらず、余計な事を言えるような雰囲気ではなく私は俯いた。

「優里香、着替えに行こう？君の部屋はどこ？」
優里香だの君だの、ずっとお前としか呼ばれていなかった私は、ゾワっと鳥肌が立ち、抵抗する気力もなくなり大人しく自分の部屋へと案内した。
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