強引な副社長との政略結婚は甘すぎます
「優里香。翔太郎さんにご迷惑を掛けないようにするのよ」
少ししんみりした両親に、私はこれ以上文句を言っても何も変わらない気がした。
「うん。ありがとう」
長年住んだ家から離れることに、寂しい気持ちになったが微笑んで見せた。
結婚の前日って「お父さん、お母さんお世話になりました」そう言う事を言うのが普通だと思ってたのにな……。
呆気なく、一切予想もしていなかった展開に、怒りなのか、悲しみなのか、不安なのか……それすらわからない感情のまま、私は玄関で靴を履いた。
「後で、業者がきます。すべて手配してますがよろしくお願いします」
深く頭を下げた翔太郎に、両親も頭を下げた。
この人はこんな庶民にもきちんと頭を下げれる人なんだな……。
そんな事を思って翔太郎に目を向けると、なぜか今までで一番優しい瞳が私を見ていた。
「優里香行こう」
今までとは違う、甘く柔らかい声で呼ばれ、私は諦めにも似た感情で翔太郎の後に続いた。