強引な副社長との政略結婚は甘すぎます

拒否をしなければいけないと思うのに、もっととねだりたくなるようなキスに、私は自ら翔太郎に手を回しそうになったところに、携帯の音が鳴り響いた。

その音にお互いの動きが止まる。
翔太郎の会社の携帯だとわかると、翔太郎は小さくため息を吐くと、

「残念。おこちゃまへの恋愛指導はここまでな」
そう言って、頬にリップ音をさせて翔太郎は携帯の方へと行ってしまった。


何よ……。恋愛指導って。
ずるずるとそのままキッチンに座り込んで、自分の唇を両手で塞いだ。
ムカつく！
もう！何なのよ……。

遠くから聞こえる、真面目な翔太郎の声に、だんだんと落ち着いてきた自分に言い聞かせる。

いつもみたいに、翔太郎はふざけただけ。
初めてのキスじゃあるまいし、キスぐらい外国では挨拶でしょ！
平常心、平常心。
自分に言い聞かせて、大きく息を吐くと、何事も無かったように平静を装い、私はお皿洗いの続きを始めた。