強引な副社長との政略結婚は甘すぎます
「とりあえず結婚しないといけなくなったみたい」
要点だけ伝えた私に、円花は「えー!」と不満げな声を上げた。

「牧野さんは?」
「ああ……」
牧野さんの事など、全く思い出さなかった自分が可笑しくて、翔太郎にいかに振り回されていたかを思い知らされた。

「ああ、って。でもどんな人だったの?」
当然の質問に、私は言葉を選んだ。

「まだよくわからないかな……」
本当にわからないんだよ。イジワルな男なのか、本当は違うのか……。
少しだけ、翔太郎に興味が湧いたのは事実だった。

「でも、まあいわゆる政略結婚なわけでしょ?ほとぼり冷めたら離婚できるんだよね?」

「うん、そう言う約束。呪いがなんなのかよくわからないけどね」

「でも本当にそんな話ってあるんだね」
運ばれてきた蕎麦を前に、円花は小さくため息をついた。

「本当。なんか平凡だった人生が、一気に一生分の出来事を運んできた気分」

私も冷たい蕎麦を少しだけ口に入れて咀嚼した。
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