【短】宣戦布告なら、受けて立つけど?
そして、俺は交差点に差し掛かった。
そこで一旦陽菜さんの姿を見失って、きょろきょろしていると、百貨店の軒下を通り人の波を掻い潜って走り去っていくのを発見した。
「いた…っ」
流石に、ここまで走り込むと息も上がってくる。
でも、こんなの試合前のウオーミングアップだと思えばへっちゃらだ。
俺も同じように人混みを分け入って、少しでも早く陽菜さんに辿り着こうとした。
がしっ
「…っ。捕まえたっ。なんで逃げんの?」
漸く手にした陽菜さんの手は、凄く冷たくて…。
その横顔は、酷く傷付いているようだった。
「…っ」
「…え…陽菜さん…なんで泣いて…」
「……」
「なに?…え?…もしかして…さっきの誤解してる…?それとも…妬いてんの?」
「〜〜〜っ」
ぱしんっ
掴んだ手は、俺のその言葉によって離されてしまう。
陽菜さんは、涙目のままキッと俺を睨んだ。