【短】宣戦布告なら、受けて立つけど?
これ、本気で何気ない動作なのか…。
だったらなんか、泣きそうだ。
俺はそんな事を思いつつ、ぽつ、と呟いた。
他の誰にも聞こえないような声で。
「陽菜さん…好き」
「はいはい」
「マジなのに」
「あーはいはい」
そう。
俺の心配のもう一つの種が、この人。
何時でも何処でもムードメーカーで、彼女の周りには皆の笑顔が絶えない。
そして、群がる男も…。
何回、この人の告白現場に出食わしただろう。
俺に告白してくる女子と同じで、皆…決まり文句みたいに「好き」と「付き合ってくれ」をセットで言う。
そんなにいっぺんに、願いを叶えてやれる程、俺にキャパシティはない。
だから俺の場合、無表情が更に固くなり、無口な所に毒舌が交じる。
なのに、陽菜さんは決まってふわっと笑って、相手の肩を叩く。
それは、それは、軽快に。
「ごめん。付き合えないよ…だってあんたとは友達だもん」
それは、俺にだけ分かるちょっとした変化。
困ってて…それでいて少し傷付いている。