冷徹王子と成り代わり花嫁契約
「……なに……?」
起き上がろうと身動ぎをするが、身体の節々が重く軋んで、顔を顰めた。
クリストフ王子の手を取り、馬車に乗り込んだあとに何だか甘い匂いがして……それで、眠くなったのを思い出した。
恐らく、薬品で眠らされたのであろう。
冷たい石造りの床に手をついて身体を起こして、辺りを見回す。
鉄格子が張られ、よく見ると鉄格子が扉になっている部分がある。そこには厳重に鎖を巻かれ、南京錠が掛けられているようだった。
他に何かないか見上げると、遥か頭上に小さな窓がある。
「まるで囚人を収容する場所ね……」
ため息をついて、自分の姿を見下ろすと、纏っていた豪華なドレスは剥ぎ取られ、薄手のネグリジェを着せられていた。
手首には一枚の厚い長方形の板を二箇所、丸く穴を開けられた手枷が付けられている。
どうやら、私をここに押し込んだ犯人は何が何でも私を逃がすつもりはないらしい。