冷徹王子と成り代わり花嫁契約

「もういいわよ」


シャツと同じく、私の身体より一回り大きいジレに腕を通しながらそう言うと、エリオット王子はゆっくりとこちらを振り向いた。


「……似合っているぞ」

「目を見て言ってくださる?」


確かに私は成人が近いというのに未だに少女体型だ。服装によっては少年に見えなくもない、が。

笑いを堪えて口元に手を当てているエリオット王子の足を、思い切り踏み付けてやる。


「そういえば、靴を忘れていたな」


自分の足を踏みつける素の足を見下ろして、エリオット王子は小さく呟いた。


「靴なら私のパンプスが……変かしら?」


部屋の隅に置かれていた、私が履いていたローヒールのパンプスを履いてみせると、エリオット王子はしばし考え込むように顎に手を当てた。


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