冷徹王子と成り代わり花嫁契約
エリオット王子に言われた通り、廊下を突き当たりまで走り、階段を降りた。
途中でパンプスが脱げてしまい、履き直している暇もなく、階段に脱ぎ捨ててきたために、冷たい床の感覚が素足を這う。
ぺたぺたと肌が床を鳴らす音を響かせながら、右から三番目の扉を開けて、部屋の中に滑り込んだ。
万が一ここにいることが悟られても簡単には入ってこられないように鍵を掛けて、近くにあった大きな長机を全体重を掛けて押し、扉の前に追いやった。
「奥の棚の……裏ね……」
一度呼吸を整えるために肩で息をして、辺りを見回す。
私の身長よりも遥かに高い本棚がいくつも整列して、迷路のようになっている。
左手を本棚につきながら奥へ奥へと進む。視界が開けて一本道になり、恐らくエリオット王子が言っていた奥の本棚が見えた時、本棚についていた左手の指先がちりっと熱を帯びて、小さく悲鳴を上げた。
先ほどまで手をついていた本棚に振り向くと、一つの赤い背表紙が、わずかに光を帯びていることに気が付いた。