冷徹王子と成り代わり花嫁契約
「あなたの目的はあとでゆっくり聞くとしよう。ヴァローナ、連れて行け」
「御意」
エリオット王子はもうクリストフ王子に手ずから危害を加える気はないらしく、手にしていた銃は床へと向けられていた。
「エリオット……」
「安心しろ、殺したりはしない。相応の罰は受けてもらうがな」
クリストフ王子はどんな事情があろうと、国を巻き込んだ事件を起こしてしまったことは変えようのない事実。
そこに、私が口を出すことは出来ない。
「不安そうな顔をするな。彼を傷付けることはもうしない」
押し黙った私を見て胸中の不安を悟ったのか、エリオット王子は大きな手を私の頭の上に乗せて、子供をあやすようにゆっくりと撫でた。
「それより、君は怪我はないのか?」
「平気よ。ヴァローナにも、あなたにも守ってもらったから」
《血印の書》を持ち出す際に掠めた傷跡のことは黙っていようと思い、気丈に笑ってみせた。
しかし、エリオット王子はそんな些細な変化にも気が付いたのか、訝しげに眉根を寄せたのだった。