冷徹王子と成り代わり花嫁契約
「それで、一体どういうことなの?」
「黙っていて済まない」
「謝るより説明を求めるわ」
困惑と怒りで頭を抱えたくなる私をよそに、妹はニコニコとお茶の用意をしている。
「ロゼッタが亡くなったとでも言わないと君が協力してくれないと思って」
選択されなかったもしもの未来について言えることは何もないが、それでも釈然としない気持ちで私は彼の言葉に耳を傾ける。
《血印の書》についての記憶を失っていたのは本当で、国王陛下の指示の下、盗まれた《血印の書》を取り戻すために私の協力が必要だったということ。
場所がわからずとも、封印と契約の際に《血印の書》に刻まれた魂の記憶によって必ず私がそれに辿り着くということを知っていたからだという。
魔術や魔法の類いには疎く、よく分からないが、《血印の書》によって不思議なことが起きたのを目の当たりにしているため、それを信じないという方が難しい。