冷徹王子と成り代わり花嫁契約
「ねえ王子、私達はこれからも他人として生きていかなくてはいけないのかしら」
一通りエリオット王子の説明が終わったところで、ロゼッタはティーカップとソーサーを私達の前に起きながら、遠慮がちにそう尋ねた。
「いや。俺が王位継承したら、双子の子が不自由なく生きていけるようにするつもりだ」
「ありがとう。さすがは未来の国王様ね」
ロゼッタが心の底から嬉しそうに笑って恭しく礼をしたその仕草を見て、あまりの美しさに私は息を呑んだ。
同じ見た目だからこそ自分の行いの粗雑さが恥ずかしくなってくる。
「それから、クリストフ王子のことだが……」
「クリストフ……」
その名前を噛み締めるように繰り返したロゼッタは、口元に手を当ててほんのりと頬を赤く染めた。
なるほど、これはクリストフ王子も夢中になってしまうのも頷ける。
「今回のことは全て国民には伏せる。貿易と親交も今まで通りに行う」
「まあ……!」
彼女がクリストフ王子の所業をどこまで知っているのかは知らないが、ロゼッタはほっと胸を撫で下ろして安心したように微笑んだ。