冷徹王子と成り代わり花嫁契約
「ありがとう、エリオット王子」
"彼を傷付けるようなことはもうしない"
私と口頭で交わした約束を、エリオット王子は忠実に守ってくれたのだ。
そのことに対して、私は小さな声で感謝の言葉を口にした。
それを聞き逃さなかったらしく、エリオット王子は私の手に自分の手を重ねた。
「それからロゼッタ。君はもう自由の身だ。しかし城に残るというのであれば、今までと同じような生活を保障するが……」
「いいえ。私はクリストフ王子の元へ行きます」
先ほどまでの触れたら崩れてしまいそうな雰囲気から一点、彼女は凛とした声でそう返した。
「彼には国に決められた婚約者がいるそうだが……苦労をするぞ」
「構いませんわ。私はクリストフ王子と生きて行きたいのです。今までお世話になりました」
失礼な言い方をするけれど、ロゼッタは蝶よ花よと育てられた世間知らずの少女かと思いきや、しっかりと自分の意志を持った強い女性のようだ。
彼女なら、どんな困難も乗り越えてしまいそうで、私も思わずつられて微笑んだ。