冷徹王子と成り代わり花嫁契約
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城に帰るまでの馬車の中で、何となく気まずくなって、私は移り変わる外の景色を眺めていた。
ふと、エリオット王子の手が私の膝の上にある手に触れて、私は弾かれるように隣に座る彼の方を見た。
「な、何よ……」
ロゼッタならば頬を赤く染めて恥じらうだろうが、私は照れ隠しに目を細めて彼をじとりと睨み付けることしか出来ない。
そんな私の心を全て見透かしたように、エリオット王子は穏やかに微笑んで、私の手を軽く握り締めた。
「君と愛を深めようと思って」
「……あなた性格変わってない?」
初対面の頃のあの冷たい態度や表情のエリオット王子はそこにはなく、いつしか見た国王陛下のことを思い出していた。
(記憶が戻ったからというより、遺伝的な問題なのかしら……)
「ねえ、一つ聞いてもいい?」
「どうぞ」
何も言わずに私をただ愛しそうに見つめるその視線に耐え切れず、私はふいと顔を逸らして、誤魔化すように話題を変えた。