冷徹王子と成り代わり花嫁契約
「そこで、お前に頼みたいことがある」
「……私に?」
「ああ。お前にしか頼めないことだ」
男の差し出した右手に、妹が大事にいつも身に付けていた、純銀のロケットペンダントが握られていることに気が付いて、私はそれに視線を落とした。
「私に、妹のふりをして生きろと言いたいのですね」
私と妹のロゼッタは、一卵性の双子だった。
祖国、レッドフィールド王国の王族の直系の子孫として、この世に生を受けた私達は、生まれた時すぐに引き離された。この国では、双子は災いの象徴だからだ。
妹は王族の血縁者として迎え入れられ、私は一度、庶民の手によって育てられた。
そして、物心がつき自分で自分のことが出来るようになった齢の頃、国王陛下の住まわれる王宮の従者として、この国の現――いや、今は亡くなってしまったから、元と云うのが正しいか。
王女のロゼッタとは血縁関係のない、容姿の良く似た赤の他人として、呼び戻された。それが、五年前の今日だった。