冷徹王子と成り代わり花嫁契約

「駄目じゃないか。こんな時間に明かりも持たずに……一体どうしたんだ?」
「明かりは……この通り」


風に吹かれて灯火を掻き消されてしまった蝋燭を掲げて見せると、エリオット王子はああ、と納得したような声を漏らして、手に持っていた燭台を私に向かって差し出して、傾けた。

彼の意図することをすぐに察して、私も手にしていた燭台を傾ける。

芯の先が寄り添うように合わさり、消えた蝋燭の明かりが再び息を吹き返した。

「ありがとう、助かったわ。あなた、どうしてこんなところに?」
「書斎に本を取りに行こうかと思っていてね。君こそどうしてここに?君の部屋は反対側だろう」


昼間の自分の発言を覚えていないのか、それとも惚けているのかはわからないが、エリオット王子は不思議そうな顔をして私を見下ろしている。


「あなたの部屋に行こうと思っていたのよ」


簡潔にそう伝えると、エリオット王子は目を見開いたままでしばらく固まってしまった。

それから、何かを思い出したかのように目を上方に泳がせた後に、私の右手をすくい上げた。

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