冷徹王子と成り代わり花嫁契約
「ここが俺の部屋だ」
両開きの木製の扉を前に、エリオット王子は立ち止まった。
彼が扉を押し開けて部屋に入るその後ろを着いて、私も部屋に入った。
彼の言った通り、書斎に本を取りに行くだけのつもりだったらしく、部屋の中の蝋燭の明かりは付けたまま。
とはいえあまり見晴らしが良いとは言えず、私は何か手掛かりになりそうなことはないかと辺りを見回す。
書類を収める簡易な本棚に、クローゼット、椅子や机、なんの変哲もない貴族の部屋といった感じだ。
「さて、どういうつもりで来たのか聞かせてもらおうか」
部屋の中をじっと観察していると、後ろから伸ばされた手によって燭台が取り上げられる。
彼の持っていたものと同じように、棚の上に置かれ、キャンドルスナッファーを被せられた。
彼の手の動きを観察するのに夢中で気付かなかったが、頭上から影がかかったことに気が付いて、顔を上げる。
射抜くような鋭い眼差しとかち合って、思わず息を呑んだ。