冷徹王子と成り代わり花嫁契約
「ど、どうって……あなたが言ったんじゃない。部屋に来たら私の知りたいことを教えてくれるって」
「……まさか本気にしたのか?」
ほんの冗談のつもりだったんだが、と言ったエリオット王子は、心の底から困惑しているといった表情で肩をすくめた。
「それとも夜這いの口実か」
「よ、夜這いだなんて!」
とんでもない言葉が彼の口から出てきて、思わず声を荒らげてしまった。
エリオット王子は静かにするように、と私の唇に人差し指を押し当てる。
誰のせいで、と釈然としないながらも私は静かに頷き、一歩後ろに下がって、彼から少し距離を取ることにした。
しかし何故か、私が空けた距離はすぐにエリオット王子に詰められてしまう。反射的に胸の前に突き出した私の手を、彼は簡単に絡め取った。
「まさか男の部屋に上がり込んで何事もなく帰れると思っていたのか?」
「な、何するの……」
掴まれた右手の指先に、彼の唇が掠めて思わず小さく悲鳴を上げてしまった。
その反応が楽しくて仕方がないのか、エリオット王子は怪しげに口元を歪めて微笑んでみせた。