冷徹王子と成り代わり花嫁契約
「そんなことより、早く教えて。あなたが一体何を企んでいるのか」
「ずいぶん実直な娘だな。嫌いじゃないが」
あくまで私に彼を誘惑する気がないとようやく諦めてくれたのか、エリオット王子は残念そうにため息をついて、名残り惜しそうに私の髪の毛に指を通して、離れた。
「分かった。現状で話せることは全て話そう。君には協力してもらっているわけだしな」
「ありがとう、助かるわ」
「こちらのセリフさ」
エリオット王子は壁際に置かれていた椅子を、既に置かれていた椅子と対の位置になるようにテーブルの前に置いた。
それから、暗くてよく見えなかったが、部屋の奥の方に扉があるらしい。
そちらに歩み寄って、静かに扉を開け、私の方を振り向いた。
「ハーブティーでも淹れよう。少し座って待っていてくれ」
「そんな!そんなの、私がやるわ!」
「いいや、今の君は客人だからね。客人を持て成すのも俺の仕事だ。あまり深く考えず楽にしていてくれ」
婚約者の男性に、ましてや王子に給仕の真似をさせるなんてとんでもないと目を見開いて動揺していると、エリオット王子は大したことじゃないとでも言うように笑った。
「俺のちょっとした趣味なんだ。付き合ってくれないか」
そこまで言われしまっては、食い下がるわけにはいかない。
私は渋々頷いて、彼に言われた通りに椅子に腰を下ろして、彼が陶器のカップやソーサーに触れる音をじっと聞いていた。