冷徹王子と成り代わり花嫁契約
「そうだな、今回君の力が必要になったのもそうだが……同時に君を守る目的でもある」
テーブルの真ん中に置かれたキャンドルスタンドに照らされて、ティーカップの金色の蔦の模様が反射している。
湯気の出るティーカップがエリオット王子の手によって目の前に差し出されて、私は話半分でその動きを観察していた。
「……変なものを入れたりしてないわよね?」
「まさか」
まだこの男を完全に信用しきっていない私は、念の為とジト目で彼を睨み付けた。
警戒心剥き出しの私の様子を見て、心外だと言わんばかりにエリオット王子は肩をすくめる。
「なんなら俺が口をつけたあとのティーカップで飲むか?」
「いえ、結構よ。失礼したわ」
少しだけむっとしたような表情で、エリオット王子は私にと出したティーカップを手に取り口を付けようとする。
私は慌ててそれを制止して、彼の手からティーカップを受け取った。