冷徹王子と成り代わり花嫁契約
「はあ。大体事情は分かったわ。その《血印の書》を開けて欲しいってことね。わかった、わかりました。早く出してちょうだい。そして、用済みの私は明日にでも街に帰らせていただくわ」
「ない」
半ばやけくそに吐き捨てて、早くそれを寄越せと言わんばかりに手を差し出すと、《血印の書》の模造品を手渡された。
それと同時に聞こえてきた簡潔な言葉に耳を疑って、私は短くなった横髪を耳にかけて、眉をひそめた。
「……何ですって?ああ、私の聞き間違いかしら。もう一度お願い出来る?」
「ここにはない。盗まれたんだ」
何でもないことのように淡々と言い放つエリオット王子と、私の手元にあるティーカップを交互に見比べて、私はゆっくりと息を吸った。
「それはご愁傷様。やっぱり私、帰らせていただきます」
「待て。それではお前を俺の監視下に置いた意味がないだろう」
やっぱり、妹の代わりになれと言ったのは、私を監視するためでもあったのか。