冷徹王子と成り代わり花嫁契約
「王位継承の準備のため《血印の書》の封印を解く儀式をし、失敗をした。その混乱の最中、何者かによって盗まれてしまったんだ」
「そして、その何者かに妹は用済みと判断され、殺されたわけね」
「そうだな。内部の犯行だとしても、その場に侵入者が居たのだとしても、どちらにせよそいつには全て知られてしまったわけだ」
まだ、何かの計画によって、エリオット王子に妹が殺されたという可能性が拭いきれない私は顎に手を当てて、睨み付けるように目の前の男を見つめる。
しかし、国王もそう若くはないし、病気を患っている身だ。
一刻も早く王位継承を済ませて国の安寧を保ちたいはずの彼が、わざわざそんな嘘をついてまで私を縛り付けておく理由がない。
それならいっそ、妹ではなく私を殺してその血で封印を解き、何も無かったように妹と結婚すれば良かっただけのこと。
その方がよっぽど合理的だし手っ取り早い。
ただの王宮の従者の一人に過ぎない私の死など、そっと土に埋めて闇に葬り去れば良いのだから。