冷徹王子と成り代わり花嫁契約

「それにしても、一体何の目的があって《血印の書》を盗んだのかしら」


レガリアはそもそも、その国において王位を継ぐ者にしか意味を成さない物。

エリオット王子がレッドフィールド王国の次期国王だということは、国民全員が知っていることだ。
盗んでどうにかしようとしたって、エリオット王子以外には何の価値もない、開くことのできないただの本だ。


「《血印の書》を盗んで得をする人物はいるの?」
「いない……こともないが」


エリオット王子は、にわかには信じられないといった表情で口元に指先を当てた。


「いるとしたら、この国をよく思っていない近隣の国の者だろうな。王位継承が成されなければこの国の衰退は免れない。そこまで行かなくても、レガリアを盗まれたとなれば国民からの王族への信頼は無くなるだろう」
「そう……。特別敵意を向けられているとか、心当たりは?」
「分からない。時折、取り引きのために他国の王族や商人と商談をすることもあるが、皆金に卑しい連中だからな。悪事を働きそうな人物に心当たりがありすぎて見当がつかない」


なるほど、私が想像していたよりも王族の人間の仕事は大変らしい。

今までお茶を飲んで勉強して舞踏会を開いている印象しかなかったために、申し訳なく思う。

私は王宮の従事者だったとはいえ下っ端も下っ端で、王族の人間に会うことはおろか、内部情報など風の噂程度にも入って来ないのだ。

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