冷徹王子と成り代わり花嫁契約

「お口に合ったようで嬉しいわ」

「はい……とても、美味しいです」


口の中にあるものを咀嚼し終えて、もう一度思ったことを口にすると、女王陛下はニコニコと、先程よりも機嫌が良さそうに微笑みながらティーカップの取っ手に指を滑らせた。

最初の感動を忘れないうちにもう一口分、フォークを入れるとサク、と簡単に切り分けられる。
こういった果実系のタルトはフォークを入れた際にタルトと果物が分離してしまいがちだが、それすら計算に入れているのか、形を崩すことなく綺麗に一口大になる。

このタルト・タタンを作ったパティシエはかなりの腕前なんだろう。

両親が作ってくれたタルト・タタンはそこそこ美味しいが、甘ったるく、リンゴの風味が消えてしまっていたから。
とてもではないが一ピース全てを食べ切ることは難しかった。

しかし、このタルト・タタンはもっと食べたいと思わせるほど酸味と甘みのバランスが良く、そして絶妙なタイミングで、サブレのように口の中から消えていくのだった。


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