冷徹王子と成り代わり花嫁契約
「……いつから、お気付きに?」
「お茶会の途中から。あの子は普段からぼんやりしていることが多けど、今日は随分と受け答えがしっかりしていたから」
いつもと雰囲気が違うというだけで、顔が同じ別人だという結論に、果たして至るだろうか。
もしかしたら、これは国を巻き込んだ何かの陰謀なのでは、などと考えを巡らせていると、女王陛下はにっこりと笑った。
「生き別れの姉がいると、あの子から聞いていたからもしかしてと思って。大丈夫よ、誰にも言ったりしない。何か事情があるのでしょう?」
どうやら、私の妹はかなりのお喋りだったらしい。
まさかそのことを他の者にもうっかり話していないだろうかと気を揉んでいると、右手に持っていた石鹸を女王陛下に颯爽と奪い取られた。
「ちなみに、左利きは嘘よ」
なんて、可愛らしくぺろりと舌を出して笑う女王陛下に目眩がした。
「こういう風に騙される可能性もあるから、誰に何を聞かれてもあくまで濁しなさいね」
立場的に、彼女がこのことを誰かに漏らすと王宮に打撃を与えかねない。故に、彼女からどこかに話が流れることはないだろうが……。
まんまと彼女の策略に嵌ってしまったことにショックを受けてうちに、あっという間に一日が終わりを迎えようとしていたのだった。