冷徹王子と成り代わり花嫁契約
「ご、ごめんなさい……」
咄嗟のことだったにも関わらず、エリオット王子は私を易々と受け止めてみせた。
胸の鼓動が聞こえてしまいそうなほどに近い距離と、手のひらに感じる固い筋肉の感触に、妙に気恥しさを感じでしまい、半ば突き放すようにして離れようとする。
しかし、その手はするりとエリオット王子の手に取られて、指先と指先が絡み合った。
突然のことに驚いて、二、三度瞬きをしたあとに、その整った顔が目と鼻の先にあって、思わず息を呑んだ。
――キスを、される。
脳がそう認識し、警鐘を鳴らした。私は咄嗟にうつむいて、その顔を空いた方の手で押しやった。