冷徹王子と成り代わり花嫁契約

「……昨日は冷たくしてしまってごめんなさい、と言うつもりで……タルト・タタンを焼いてきたの」


ため息をつきながら紙袋を拾い上げて、私は正直にこの中身と、ここに来た目的を話した。

エリオット王子に手招きをされて、私はおずおずと部屋に足を踏み入れる。

背後で独りでに扉が閉まって――いや、どうやらヴァローナが入れ違いで出て行ったようだった。彼の姿がない。


「昨夜のことは、俺が悪かった。君に謝らせてしまって、すまない」


長い足を惜しみなく利用してすぐに扉の前に立つ私の方へ来たエリオット王子は、優美な動作で私の手を取り部屋の奥へと招き入れた。

小さな丸テーブルの前に設置された椅子を引かれて、私は小さくお辞儀をして、促されるままに座る。


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