冷徹王子と成り代わり花嫁契約

差し出された手に、遠慮がちに紙袋を乗せる。

エリオット王子は「ありがとう」と子供に言う聞かせるような優しい声で言い、静かに紙袋の封を開けた。

一緒に入れていたデザートフォークを先に取り出し、次に敷き紙に巻かれたタルト・タタンをテーブルに置いた。


「や、やっぱり無理して食べなくてもいいのよ!」


中身は切り分けた綺麗な円錐形のまま、崩れてはいない。

しかし人に、ましてや仮にも婚約者に食べてもらうなんて、今更だが不安になってしまう。渡す前に一切れ味見したが、我ながら美味しく出来たと思う。

しかし、彼と味覚が合うかはわからない。

調理過程にはしっかりと気を配ったが、お腹を壊さないだろうか、などと色々な考えを巡らせているうちに、エリオット王子は一口大に切ったタルト・タタンを口に含んでいた。


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