冷徹王子と成り代わり花嫁契約
「ど、どう……?」
エリオット王子が静かに咀嚼するのを、手のひらに汗をかきながら、じっと見つめて待つ。
エリオット王子はすぐに二口目を口に運んで、また咀嚼してから、ゆっくりと口を開いた。
「美味しい」
その言葉に、私は胸に手を当てて息を吐いた。
「良かった。あなたのことを考えて作ったのよ」
安心のあまりそんな言葉が口をついて出て、私は次の瞬間には自分の手で口を塞いでいた。
「……そんなことを言われると、勘違いもしたくなるだろう」
エリオット王子は少しだけ拗ねたように目を細めて、また一口、タルト・タタンを食べ進める。
彼が綺麗に食べ終えたのを黙って待って、最後の一口を飲み込んだのを見て、私は口を開いた。