冷徹王子と成り代わり花嫁契約

「ねえ、勘違いって?」

「……っ、さあな」


先程の彼の言葉が理解出来ずにそう尋ねるが、目を逸らされてしまった。


「それより、勉強が残っているんだろう。ヴァローナに怒られても知らないぞ」

「そうだったわ!ねえ、本当にもう怒ってない?」

「最初から怒っていない」


念を押すように強めの口調で言われて、私は頷く他なかった。

彼が怒っていないと言うのであれば、私はその言葉を信じるしかないだろう。


「俺の気が変わらないうちに、早く戻れ」


本当に大丈夫かしら、とエリオット王子をじっと見つめていると、長い腕がこちらに向かって伸ばされる。

綺麗な指先が、ゆっくりと私の唇をなぞった。

彼の言わんとしていることを理解して――私は椅子を吹き飛ばす勢いで立ち上がって、ドレスを翻した。


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