冷徹王子と成り代わり花嫁契約
「やっぱり、最低!反省してないじゃない、謝って損をしたわ!」
顔を真っ赤にしてそう怒ると、エリオット王子は口元に手を当てて、笑い声を上げた。
(からかわれたんだわ、私!)
ひとり楽しそうな笑い声に余計に腹が立って、私はドレスをつまんで、レディらしからぬ大股で部屋を出て、荒々しく、叩き付けるように扉を閉めたのだった。
息を巻いて廊下を歩いて自室に向かう途中――冷静になった頭で、タルト・タタンを渡すついでに伝えようとしていたことを思い出した。
クリストフ王子と接触し、私のことをローズ・スカーレットではないと疑っていた、ということだ。
「……そのうち話しましょう……」
今はあの男の顔を思い出すだけでも腹立たしい。
触れられた唇の感触を思い出して、私は子供の地団駄のように、パンプスのヒールを強く蹴った。