冷徹王子と成り代わり花嫁契約
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ヒールの高いパンプスを踏み鳴らして、何度か転びそうになりながら、私は廊下を走った。
すれ違う従者達に幾度か声をかけられたような気もするが、何を言っていたかまでは分からない。
「エリオット!無事なの!?」
エリオットの部屋の前に着き、ノックをする事も忘れ、私は勢いよく扉を開け放つ。
中には自室のベッドの上で本を読んでいたエリオット王子がいて、目を丸くして開け放たれた扉の方に立つ私を見ていた。
「……ああ、君か」
私の杞憂に反してエリオット王子はいつもと変わらず、私の姿を一瞥して、それ以上何かを言うわけではなく、また本に視線を落とした。
「怪我を、したって……」
後ろで扉を閉じて、おずおずと私がそう口にすると、エリオット王子はため息をつきながら本を閉じて、私を見上げた。