冷徹王子と成り代わり花嫁契約

「もう子供じゃない。意味はわかるだろう」


エリオット王子の言葉に私は反応することができず、手元にあるエリオット王子のシャツの、腕の部分をくしゃりと握り潰した。


「エリオット王子、私は……」


あなたの婚約者のローズ・スカーレットじゃない。イリヤ・アシュフォードよ。

そう言いかけて、口をつぐんだ。

浮いた爪先からパンプスが滑り、小さな音を立てて床に落ちたのがわかった。
それと同時に、エリオット王子が私の手首を掴む手の力が緩んだのを感じて、私は上半身を起こした。

図らずもエリオット王子のベッドの上に乗ってしまっていたらしく、私は慌てて降りようとするがシーツの波に足が呑まれて、上手く動けない。

ひっくり返って転がり落ちそうになるのをエリオット王子の手で腰を支えられて、何とか私は体勢を立て直すことが出来た。


< 92 / 152 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop