冷徹王子と成り代わり花嫁契約
「ご、ごめんなさい……怪我は痛まない?」
「平気だ。もう何ともない」
怪我をしているのにエリオット王子に負担をかけてしまったと、私は慌てて彼から距離を取ろうと起き上がる……が私の首から胸元にかけて結ばれたリボンに、エリオット王子がそっと指をかけたので、驚いて固まってしまった。
「君の全てを知りたい」
ようやくエリオット王子が私と目を合わせたかと思えば、それはまるで初恋を知った子供のように熱を帯びていて、私は圧倒されて声を失ってしまった。
――嫌になるほど書物で読まされたが、婚前交渉は、この国では大罪。
婚約をしているのであれば、一般市民の場合は許される場合が大抵だそうだが、王族にとってはご法度だ。
これが誰かに知られたら、私だけではなく、エリオット王子だって……。
私はしばらく視線をあちこちに彷徨わせたあとに、もう一度エリオット王子を見る。
切なげな表情と、熱の込められた瞳と目が合って、私は息を詰まらせた。