冷徹王子と成り代わり花嫁契約
「どうしたらいい……どうしたら、君は泣き止む?」
そんなことを言われても、私の瞳から零れ落ちる涙は止まることはない。
私にだって、自分がどうして泣いているかなんてわからないんだから。
「……エリオット王子は、ロゼッタのことを愛していたの?」
無意識に口をついて出た言葉に、私ははっと目を見開いた。しかし、エリオット王子はしっかりと聞いていたらしく、眉をひそめたようだった。
「自分の婚約者を愛すことは、何もおかしなことではないだろう」
「……そう」
その言葉を聞いて、私はじくじくと膿んだ傷口のように痛む胸を抑えて、エリオット王子の手を振り払い、自分の手で涙を拭った。
――私はあくまで、ロゼッタの身代わり人形。血が繋がっていても、彼女本人ではないのだ。