儚い記憶
28歳の社会人の拓とは、友達の紹介で出逢った。
20歳の私には、最初の頃はとても大人に見えて、タバコを吸う姿にも何故だかきゅんとしたんだ。
何度か会ううちにたまに見せる優しさに惹かれてそのまま付き合うことになり実家を出て同棲を始めた。

しかし、始めは優しかった拓も、一緒に住んでみると今まで知らなかった短気な一面や、暴力的なところ、酒癖の悪さ、などを目の当たりにすることになったのだ。
ひどいときには、背中にタバコを押し付けられて火傷したこともある。

周りの友達からも早く別れた方が美桜のためだと背中を押された。
そんな日々に嫌気をさした私は、拓のいないうちにこっそり引っ越してしまおう、そう心に決めて夜の街で働き始めた。

ーーもちろん、キャバクラで働くことは拓には内緒で。

幸い、拓の仕事は居酒屋だったので夜遅くまで働いてもバレることはなかった。









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