プロポーズは突然に。




少し距離を取って横になる私を引き寄せるように抱きしめる彼からはやっぱりシトラスの香りがする。


あ、この心地いい匂いはシャワーの後でも消えないんだ…


なんて、呑気にそんなことを考えている私の唇を彼が塞ぐ。





「…桃華」

「…んっ…」



彼のキスは優しくない。



昨日と同じように噛み付くような、

上唇も、下唇も、余すところなく吸いとられるような、そんなキスなんだ。


でも、これは唇が触れ合うだけの無意味な行為。


だから…



絡まる舌からほんのり赤ワインの味がしてクラクラするのも、



私に覆い被さった彼に見下ろされて心臓がドクドク音を立ててしまうのも、




「…っ、あ…」



首筋に這う舌に反応してしまうのも、



「…可愛いな」

「はっ…んぁ…」



耳元で囁かれて甘ったるい声が漏れてしまうのも、

全部全部…お酒の所為にできたらいいのに。



酔った勢いで、とか、飲み過ぎて記憶を無くして…とかね。



そうならどれだけ良かったか。




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