プロポーズは突然に。





その時は、まだ美容業界に入りたいなんて思っていなくて。

美容院だって、“ただ髪を切る場所”だって、そう思ってた。



その当時、まだRoadwayはなくてオーナーは都内の美容院でスタイリストをしていたんだけど。




『ここだよ』

『…』




連れて行かれたのは私もよく知っている美容院で…少しだけ戸惑った。





『へぇ~、15歳なんだ。若いね』

『…』

『あ、もしかして話し掛けられるの苦手な人?』

『いえ…すみません。もう何年も美容院に来てないので緊張しちゃって…』

『え?そうなの?もしかして自分で切ってるとか?』

『…』





恥ずかしい、と思った。

周りの友達はみんなオシャレなカラーに染めていたり、ストレートパーマでサラサラにしていたりするのに。


この頃の私は、“その日”を生きることに精一杯で…

自分にかけるお金も時間も…皆無だったんだ。




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