プロポーズは突然に。
『父の名前は…幹本 秀夫です。五年前までこの美容院でオーナーをしていました』
『えっ…?幹本さんの娘…?』
『…』
黙り込んだ私にオーナーはそれ以上何も聞かなかった。
それでも鏡越しに見えた顔は同情なんてしていなくて…
目が合うたびニッコリ笑ってくれたオーナーを見てやっぱり安心した。
それから暫くの間、会話をすることはなく、私はただただ食い入るようにオーナーの技術を鏡越しに見ていた。
軽やかなハサミ使いと、どんどん変わっていく自分。
まるで魔法にかかったみたいな感覚で…
胸の奥が熱くなったんだ。