プロポーズは突然に。




『桃ちゃんさ、美容師さんになりなよ』

『え…?』

『向いてるよ、きっと』

『…』

『お父さんが見てた景色、見たくない?』

『…』

『俺はずっと桃ちゃんのお父さんに憧れててさ。いつか自分の店を持って幹本さんを招待して、大きくなったなー、って褒めてもらうのが夢なんだ』




そう言ったオーナーの目はすごく輝いていて、


色を失った私の目には本当に眩しくて…


美容院って、髪を切るだけの場所じゃないんだ。


お客さんだけじゃなくて、働いている人もこんなに輝ける場所なんだって、そう思った。





『はい、完成したよ』

『う、わぁ…』




鏡に映った自分を見て、新しい自分になれたような気がした。


私は、周りのみんなと同じ女子高生なんだって自覚もできて…


とにかく嬉しくて…感動だった。

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