プロポーズは突然に。
『お父さん。私、美容師に…なりたい』
電話でそう告げた時、父はすごく嬉しそうな声で
『そうか…頑張れよ』
そう、言ってくれたのに。
まだ専門学校も卒業してない内に……
父は私の前から永遠に姿を消した。
もう美容師になったって褒めてくれる父はどこにもいない。
もう辞めよう、もう諦めよう。
涙を流すこともできず、真っ直ぐ前だけを向いていた私は遠い目をしながらそんなことを考えていたんだ。
でも、そんな私にオーナーは手を差し伸べてくれた。
『桃ちゃん…専門学校卒業したらうちの美容院においで』
同情の目でも、好奇の目でもない。
とても優しい眼差しで…そう、言ってくれた。
『お父さんが見てた景色、一緒に見ようよ』
『…………はい』
ーーーオーナーの存在があったから、きっと今の私がある。