プロポーズは突然に。





名前も知らないこの感情に戸惑っていた。


とにかく逃げたかった。耳障りなくらい心臓が音を立てて煩くて…早くここから立ち去りたかったんだ。


でもそんな思いも虚しく、浴槽から出ようとした瞬間、彼は私の腕をしっかりと掴む。




「…逃げるなよ」

「…っ、」




チャプン、彼が湯船に浸かると、腕を掴まれている私も自然とそこに引き戻されるわけで。




…落ち着かない、出たい、逃げたい。


私の頭の中は、こんな思いでいっぱいになっていた。





「…桃華」





その声に顔をゆっくりと上げた。


暫く重なり合う視線。

そのまま引き寄せられ、頬には手を添えられて、彼の顔が近付いてくる。

その次の展開が容易に理解できた私は…静かに目を閉じた。

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