プロポーズは突然に。
いつも通り、シトラスの香りに包まれたベッドルーム。そこで彼と隣同士、向かい合って横になる。
眠りに就く前、彼は私を抱きしめながら髪を指で梳かしたり、大きな手でふわっと撫でてくれたり。
こんな風に誰かに触られるのは嫌いなのに。それでも…私は黙って彼を受け入れてる。
説明しようのない矛盾。自分でも分かり得ない感情。
温かいのに苦しくて。一人じゃないのに、一人でいた時よりも怖くて。
「…大丈夫。おまえは一人じゃない」
「うん…」
毎夜毎晩、呪文のように囁かれるその言葉だって私の恐怖心を煽るだけのものでしかなくて。
五年前から私を知っていた彼は、一体私の何を知っているのだろう。
何を知って…結婚という形で私をそばに置いているのだろう。
最初の頃は考えていたそんなことも、今ではどうでもよくなった。
だって温かいから。でもきっとこの温もりは続かない。
だって満たされるから。でもきっとすぐ空っぽになる。
だってもう一人じゃないんだから。でもきっと………、
私は強い女性でありたいのに。
うじうじと悩み、もがいている今の私は…とてつもなく脆くて弱い。
―――こんな自分大嫌いだ。