プロポーズは突然に。




いや、そんなわけないか。


じゃあただの変質者?それか新手の結婚詐欺か…


まぁ普通の人ではないことだけは確かだろう。


そもそも日下さんに渡されたのは婚姻届だけで連絡先も何も聞かれていない。


そんな状況で三日後までに書いておけって言われても…



「桃ちゃんおはよう」

「オーナー…おはようございます」



開店準備をするスタッフ一人一人に挨拶をして回るのは私が勤める美容院『Roadway』のオーナー、藤原 隆臣さん。


フワフワのパーマにベージュに近い明るめのカラー。

落ち着いたネイビーのジャケットの下には白いカジュアルなTシャツを合わせ、綺麗めなパンツを履いたオーナーはいつだってスタイリッシュ。


30代半ばの彼は、コンテスト等で数々の賞を受賞しカリスマ美容師と謳われる実力派だ。


尊敬する上司であり、私がここで働く機会を与えてくれた人物でもある。



「どうした?元気ないよ」

「いえ、そんなことないですよ」

「そう?それならいいけど」




私情を仕事に持ち込むのは良くないか。

昨日のことは忘れて仕事に専念しないと。

< 19 / 370 >

この作品をシェア

pagetop