プロポーズは突然に。




「俺とおまえは家族だろ?」

「か、ぞく…?」

「そう。家族なんだから“ただいま”と“おかえり”はちゃんと言え」

「…」

「“おはよう”も“おやすみ”も“いってきます”も“いってらっしゃい”も。忘れずに全部言え、いいな?」





私が静かに頷くと、彼は納得したように口角を上げ再び仕事に取り掛かる。


私はソファーに戻り、一時停止していたDVDを再生して再び観始めた。





「桃華、」

「…ん?」

「ただいま」

「…………おかえり」





ソファーに座る私から見えるのは彼の後ろ姿。


背中を向けられているはずなのに…


たったこれだけの些細なやりとりに、私の心は震えていた。


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