プロポーズは突然に。
ロッソ・ピウマは世界で活躍する日本ブランドの一つ。
高校生の頃、海外のファッション雑誌で取り上げられているのを見た時から私がずっと憧れているブランドだ。
とにかく原材料に拘り抜き、他にはない新しい商品を続々と生み出していて海外セレブを虜にさせている。
ロッソ・ピウマのコスメを求めて色々なお店を巡ったものの、結局巡り会えなかった。
その理由が、さっきオーナーが言った通り大量生産しない、そして殆どが海外に出荷されているからだと知ったのはこの業界に入ってから。
手が届かないと思っていた憧れのブランドの商品をRoadwayで扱えるかもしれないなんて…夢みたいだ。
「でも私でいいんですか?私、ここで一番下っ端の人間ですよ」
「それがさぁ…ロッソ・ピウマの代表って、自分が気に入らない人間とは一切取引しない冷徹人間らしいんだよね」
「はぁ…」
「だから俺ビビっちゃってさ。若い女の子一緒に連れて行けばめちゃくちゃなことはしないだろうし…同行お願い!」
部下の私に頭を下げるオーナーは完全に自分の立場を忘れている。
厳しさと優しさと美への拘り、そして少しのお茶目さを兼ね備えている、そんな人だ。